石畳の道には表情がある。角型に切り出した石を波型に並べたり、方眼に並べたり、職人の感覚と技術で並べていくのだから、妙に整って見事なイシダタミから、なんとも不安なイシダタミまでいろいろある。とくにモンマルトルの裏道は持ち上がったりへこんだりハイヒールにとってはバツ・ゲームのような道である。そこでスニーカーを愛用するのだが、それでも足は仮死状態になる。ホテルのエステがパワー・マッサージもしてくれるというのでとびこんだ処、YUKIという若い日本の技術者に当った。まずこれに着替えて、とだされたのは小さなヒモパン、覆っているのは前部最小限であとはゴムヒモのみ、頼りないことこの上ないがじたばたせずに身を預けた。マッサージの心地よさにうつらうつらし、半世紀前のパリの思い出などしゃべっていると、彼女の口から「石渡潔先生を知っているか」という台詞がでた。知っている処ではない。世界のビッグスリーといわれた天才ヘアデザイナーで、僕はずっとキヨシの演出もしてきた。実はアタシの彼が今パリでフリーのヘア・デザイナーをしているのだが、いつも聞かされているのはキヨシという伝説のヘアスタイリストの話だという。彼の名はTSUME、翌日ベルビルの中華街に案内してもらい3人で、日本とパリのヘアメークについて語り合った。若いYUKIとTSUME、パリで花咲くことを念じている。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す