「私、妊娠してますから」うーん、大変だね。頑張って。「いま、つわりの時期なんで。」盛大にヒステリーを起こし、ミスを連発する。頼んだコピーを間違える。わるびれることなく「まだ、安定期がこないんです」仕事はあんたの安定期待ちかよ、会社はつぶれるよ。と云いたいところをぐっと我慢していると、突然、欠勤する。「昨日はどうした」とたずねると「あら、部長わたしが妊娠してるのご存じですよね」なんの連絡もなしに休み、逆捩じをくわされる。
もうこれ以上は無理と「おなかの赤ちゃんのためにも、仕事をやめたほうがいいんじゃないか」と優しく話かけたところ、鬼の形相で「妊婦を差別するんですか」と凄まれたそうだ。仕方なく派遣の女子を一人入れて、彼女の仕事をやらせている。というのが昨日の六本木での会話。
芸能人が妊娠中のプライベートを公開し、hitomi やユンソナのマタニティ・ヌードが紙面を飾り、神田うのがマタニティ・ブランドを立ち上げ、梨花はマタニティ本を書いている。結婚式で、一生の華を飾った女性たちが、折からの少子化社会で、もういちど「妊娠」をたてに主役になれるチャンスがきたとばかり、あちこちで主張している。おなかの赤ちゃんがなによりも大事なのは結構だが、まわり中に迷惑をかけて申し訳ないという気分は皆無なところが恐ろしい。
マタニティ雑誌「たまごクラブ」では、この自己中心的な妊婦にたいし、「鬼妊婦(オニンプ)」と名ずけた。妊娠の喜びや、体調管理でアタマがいっぱいで、社会のルールを無視する人を「妊婦様」と呼ぶむきもある。マタニティ・マークをつけているから、みんな私に気ずけよ、というのは、自意識過剰の増幅であり、バブル期のお立ち台のお姉さんがたの裏返しのような気もする。
鬼妊婦(オニンプ)様のお通りだ。
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プロフィール

星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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