格付け会社というアメリカ

　いま世界を動かし、世界の経済をあからさまに動かしているのは、格付け会社という正体不明のオバケではないだろうか。
　勿論世界の地下経済は、ウォール街のうしろにあるもの、グレート・ロンドンの背後にあるものと色々だが、目立って世界秩序に影響力を行使しているのは、格付け会社とよばれるアメリカの二大会社だ。
　S&P スタンダード・アンド・プアーズ　ともうひとつ　ムーディーズ　と呼ばれるアメリカの二大格付け会社が猛威を振るっている。
　先月の13日金曜日には、フランスを始め、EU　９ヵ国の国債の格下げを発表し、全ヨーロッパを混乱におとしめた。イギリスに始まった反政府運動は地中海を一周し、ギリシャを破局に導き、フランスの銀行を破綻させた。EUと格付け会社の戦争は緒戦に於いて格付け会社の圧勝に終わった。
　S&Pによって高いランクを得ていたサブプライム・ローンはあっというまにジャンク・ボンドに変わったし、リーマン・フラザースも高いランクを与えていて、あるとき突然破産した。庶民の金を集めるだけ集めておいて、地獄に蹴落とす。ヨーロッパの政治家は、格付け会社というのは、アメリカのグローバル化戦略の尖兵と認識している。
　BBCは「病人から薬を奪うのが格付け会社」と弾劾し、上場企業の皮をかぶったアメリカ戦略本部だと非難している。非公開の秘密組織ですべてがきめられているというのも、ずいぶんときなくさい。
　このトリックに気が付いた中国は、格付け会社を設立すると発表し、アメリカ、イギリスは猛反発している。ドイツでも、格付け会社を禁止し、独自のルールをつくると発表した。日本だけが、格付け会社に唯々諾々と従い、円高を容認して不況に陥っている。職を失い、金も無くなったこの日本を政治家どもは何処へ連れて行こうというのか。