唄はない、踊りもない、セリフもない、だけどここにある舞台はまぎれもないミュージカルなのだ。いまオフ・ブロードウェイで人気を集めている二つの作品がある。ひとつは東京にも来ている「ブルーマン・グループ」もう91年から20年上演し続けている。そして「ストンプ」、乱暴な言い方をすれば、この作品の出演者はコスル、タタク、心を通わせる、それだけだ。
憧れていた芸術社会学の第一回ゼミで、今は亡き佐々木昌義教授が、音楽の発生と人間について、原始石器時代、狩猟時代、農耕時代における仕事の始原にそれぞれのリズムの発生があり、のちに音楽への展開を教示してくださったが、その舞台展開がここにあった。
手をたたく、腕をたたく腰をたたく、ピアニシィモからフォルテへ、掃除をする、ブラッシの擦る音、人に人が加わって擦る音にハーモニーがでてくる。ブリキのバケツが登場する、モツプの棒とぶつかつて発する音の掛け合いがやがて陽気なリズムの世界となる。…排水管のいろいろの太さから音程の違いが発生、ついには巨大なダンプのタイヤ・チューブが主導するいろいろな車のチューブの発する音が、現代のとてつもない暮らしの音楽を造り出していく。正確にいえば、リズムだけで現代を表現し、批評し、娯楽するミュージカル、それが「ストンプ」、2番街8丁目にあるオーヒューム劇場、400人ほどの客席のあるオフ・ブロードウェイで上演している。この劇場からふた辻下がると、本格的なインド人によるカレー・ストリートがある。こうしたオフの劇場の数は随分少なくなったが、すべて9.11以後のことだといわれている。
唄ダンス台詞なにもないMUSICAL・STOMP
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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