「カワイ~イ」「可愛い!」若い子がやたらに発するこの感嘆詞が大嫌いだ。犬でも赤ん坊でも花でも、ときに酔っ払い伯父さんまでもこの「カワイ~イ」の一言でかたずける。言葉の繊細さが失われ、すべて記号化しつつあるマンガという劣悪なメディアの影響だろう。
それにもうひとつ嫌いなもの。「どんな彼がいいですか?」「やさしい人」婚活インタビューなどでも、「絶対にやさしくなくっちゃイヤ。」何時の頃からか男性に求める女性の価値観の真ん中にヤサシサが登場した。以来男どもはヤサシサめがけて一直線。本来男にもとめられるたくましさや雄々しさは鳴りを潜め、なんとも頼りない草食人間が大量発生、不作法で粗雑な肉食人間が世間を支配するようになった。
「もうすこしやさしい言葉はないの。」「やさしくしてよ。」といわれ「求めるな、やさしさなんか。やさしいのは臆病者の言い訳なんだから。」という勇気もでない。「やさしい人が好き、なんていう女の子は相手にするな。自分がやさしくない証拠だから。愛情をいつぱいもっている子は、相手にやさしさなんか求めないものだ。」と言ってみたものの今時の女性に通用するものかどうか、はなはだ心もとない。なんとなれば「力よりやさしさのほうが効き目がある」時代だからだ。それでも「本当の女性の美しさとは強靭な意志に裏打ちされたかたくなさであり、魅力とは志の高さに武装されたやさしさなのだ。」と声を張り上げたい。獅子は尖刃の谷に子供を突き落す母の愛にやさしさをみせるといわれている。「気を遣い合うというヤサシサもあるが、ときに傷つけるのを覚悟のうえで、ホントウのことをいうのも大きなヤサシサなのだ。」そうはいっても、強気な女が時折みせるヤサシサは万金に値する。
ヤサシサは根性である。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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