女子ひとりめし

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 牛丼、らーめん、そば、ハンバーガー、立食いそば、フライドチキン、回転ずし、焼き肉…最近の女子がひとりではいれる食事処だそうだ。各種ファースト・フードは当然のごとくにお出入り自由。かって女子のひとりめしは、たしなみがないとされ、必ず夫乃至両親とともにいくべしとされていた。ところが近年、女子も仕事をもち夫からの独立を獲得し、いわゆる奥様の減少とともにひとりで食事をとる機会が圧倒的に増えた。えっ、焼き肉にもひとりでいくの、と疑問をもつが、近頃の進んだ焼き肉やさんはだいぶ事情がことなるようだ。長いカウンターにコジャレタガラスの仕切りが並び立ち、それぞれに専用の無煙コンロが仕込まれている。並ロースだろうが、塩タンだろうが、はたまたホルモンの特殊部位だろうが、前後左右からは見えない。ビールを片手に心置きなくゆっくりと焼き肉を楽しむようにできている。牛丼なども大盛り並盛りに対し、プチ盛りができて、女子の胃袋に対応している。
 いっぽう回転ずしはいけるが、いわゆるカウンター寿司を苦手とする女子は意外に多い。あの寿司やによくあるウンチク親父がかなわないというのだ。あらかじめ白旗をかかげ、オマカセといえばいいようなものだが、値段不明のカウンター寿司ではどうしても不安がつきまとい、ゆっくりと寿司のあじを楽しめない。そのうえずらりと並んだ男客からの目線も痛く、もてない女がひとりできていると思われることもシャクなのだ。となりのカップル女の勝ち誇った注文口調にも腹がたつし、同席のオミズにも負けている自分があわれに思えるのだろう。寿司やのカウンターで堂々と女子ひとり握りの風景が日常化したとき、はじめて男女共同参画社会が完成することになるのかもしれない。その頃には、超高級フランス料理店に、堂々たる肉食女子が気弱な草食男子を連れて訪れる景色も当たり前になることだろう。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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