ジプシーの放浪。

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 いま、ヨーロッパではジプシー(差別用語だとして現在ではロマと呼ばれている)の取り扱いでもめている。ユダヤ人は世界経済を支配しイスラエルという国家を手にしたのだが、ジプシーはひたすら移動民族としてのルーツに頼り、人権思想の変化にも民族としてのパワーを行使してこなかったため相変わらず厄介者の扱いを受けている。
 フラメンコ・タロット占いは、彼らから生まれたし、チャップリン、モントヤ、ヨハン・シトラウス二世、ユル・ブリンナー、等みなロマ出身である。音楽、文学の分野でもジプシーから生まれた作品は多い。オペラ「カルメン」「イル・トロバトーレ」「ジプシー男爵」シューマンの「流浪の民」ロシア民謡「黒い瞳」「ハンガリー狂詩曲」「ハンガリー舞曲」「ツィゴイネルワイゼン」映画では「ノートルダムのせむし男」「007ロシアより愛をこめて」「地図のない村から」ミュージカル「屋根のうえのヴァイオリン弾き」まで数え上げたらきりのないほど、ジプシーものはある。
 EU連合は域内移動の自由を掲げて、ロマの保護に乗り出したのだが、そこに立ちはだかったのはフランス政府だ。「治安・公共秩序の維持」をかかげ移民犯罪対策の強化をめざして、ルーマニア、ブルガリアへの強制送還をつづけている。パリの人々の間でも、ジプシーは乞食、泥棒のイメージが強く、公園から安全を奪い、墓場の悪戯書きなど犯罪集団だという声が挙がっている。これ以上彼らを受け入れるとパリの美しさも文化も失ってしまうという危機感がある。かつての共産ロシアでは、彼らを一カ所に集め、強制労働・強制就学で社会復帰をめざし、民族のもっている芸術感覚を生かした作品の専門劇場ロメンを造って感動的な舞台を見せていたが、国家体制の瓦解とともにどこかへ行ってしまった。EUでもこの差別民族の解消に本気で取り組むなら、貧困・教育・定住に対して強権を発動し、みんなが血を流がさなければ解決しないだろう。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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