パワー・スポットって?

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 ひさしぶりに戸隠のそばが食べたくなった。中社のよこにある「うずらや」に電話をかけた。「明日の昼はお店開いてますか?」「はい、営業はしているんですが…」いまいち歯切れがわるい。よく聞いてみると、戸隠はいま空前の混雑で開店前から閉店まで行列が絶えないという。いつも来てくださるお客様には申し訳ないのですが、…原因は吉永小百合だそうだ。JRのテレビ・コマーシャルで「この先には、あの天の岩戸をあけた怪力の神様がいるそうです。」途端に戸隠山は満員御礼になってしまった。いつもは人ひとり居なかった奥社の杉並木参道も吉永小百合が歩いたおかげ様で、女性グループやら家族連れ、さらに恋人達の人波で賑わっている。彼女が中に入った大きな「うろ」のある杉の木にはしめ縄をはり紙垂をつけてなかに入れないようにしているが、シャメしたり、拝んだりニワカ名所になってしまった。
 気がつくと世間ではパワースポット・ブーム、不足気味の気力体力をおぎなう聖地めぐりが大流行りだ。永久保存版全国47都道府県243カ所を買い求めて開いてみると、なんのことはない伊勢神宮を始め有名神社一覧と高野山、比叡山など宗門の大本山。神仏を中心にパワースポットに名をかりたこのキャンペーンは神社本庁とどこかの広告代理店の臭いが立ち込めている。広末涼子の伊勢参宮やら、AKBの出雲大社婚カツ参り、今すぐ行きたくなったら強力パワーの宿る東京23区のご近所パワースポットとなにやらメニューが揃いすぎている。心の清浄を得られる魔界に足を運び、古代の神々と出会い、大自然の恵みに感謝し、生きるための祈りをかさねればおのずと超パワーを感じることだろう。パワースポットとは魔界において、精霊から新たな力をいただく場所なのだそうだ。それにしても戸隠のおそば屋さんはいつになったら空いてくれるのだろう。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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