建前を軽蔑し本音で暮すべきだ。耳にたこが出来るほど聞かされてきたし、そのように生きてきたつもりだ。が大人になって少し知恵がついてくると、本音というのはとても厄介なもので、たまには我慢をするのが人の和を保つということを学ぶ。さほど大袈裟に考えなくても、「私なんてもうおばさんだから」といった相手に「そうですね」と答えたらとんでもないことになる。「いいえ、まだお若いし、キレイじゃないですか」これが正しい答えだ。「恥ずかしいからデンキを消して」の本音は「体形に難あり」だし、「今日は夫の帰りが遅いの」というつぶやきには「だからゆっくり出来るわ」というお誘いがついている。
村社会でも、「開会の挨拶は遠慮するから」というお言葉を真に受けてカットしたところ、とんでもないめにあう。建前というのはなにごともあからさまに口にしないという美徳であるし、察して欲しいという奥行きのある態度なのだろう。人と人との和には建前に愛情をもち、本音はほどほどに、というのが平和のコツかもしれない。「あたし達、そろそろ潮時ね」といわれたら、だまって身をひくが最上である。
本音と建前
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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