真夏の千曲川、佐久、坂城、上田にかけて、河原のあちこちに鯉のぼりが泳いでいる。端午の節句がスケジュール変更した訳ではない。鯉のぼりは鮎の「やな場」の目印だ。春先からハヤを供していたヨシズの仮小屋が、鮎茶屋にかわった看板なのだ。多くは土手したのそんなに広くない河原に高床に丸太を組みヨシズで作った仮設レストラン。すぐ眼の前の千曲川に簗を仕掛け元気な鮎を捕獲する。料理は鮎さしに始まり、鮎田楽、鮎のフライに鮎の塩焼き、そして鮎飯に終わる。皿や小鉢の欠けなどにはいっこうに無頓着だが、鮎はなかなかの美味、くたびれた座布団に座り、いろりの炭火にじわりと焼き上がる鮎を、好きなだけ食する夏の千曲川の風物詩だ。
早朝この辺りには、鮎の友釣りを競って太公望が集まる。浅いチャラ瀬、ビギナー向けのザラ瀬、ベテラン好みの荒瀬、早瀬、トロ瀬とひととおりの流れが揃っている。友釣りは人間と鮎の知恵比べといわれるが、川の流れに腰まで浸かりじっと勝機を窺う釣り人の背中には、悟りきった宗教家の空気が漂う。
真夏の鯉のぼり
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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