鯖ずしはやっぱり「いづう」

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 朝がゆを南禅寺の瓢亭さんで食した。離れの茶室で閑静な気分でゆったりといただいた。愁海棠の一輪を眺めながらの、朝のかゆは胃にもやさしく、蒸暑い都の夏を忘れさせてくれる。
 昼は同行した友人の所望で、いづうの鯖ずしということになった。連休の最終日でお店は混んでいて落ち着かない。ならばということで、近くの祇園のお茶屋さんをかりて食べようという段取りとなった。休みの花見小路のお茶屋にあがる。よしの障子と白紗の夏ぶすまのあいだを風がしのんで風情のある座敷だ。女将の手配でまず鍵善さんの「葛きり」が切り子の小さなうつわにだされる。ほのかな黒蜜の甘さは食前でも主役を邪魔しない。やがて立派な金襴手の大鉢に「いづうの鯖ずし」が盛られてきた。笹の葉の化粧切りがすしの余白を埋めている。肉厚の鯖の旨味と酢めしのバランスもよく、巻かれた昆布のうまみも程よく移ってやはり「鯖ずしはいづう」の評判に恥じない味だ。充分に満足したあとお口に魚の脂が残るでしょうからと、菱岩さんの繊細なソーメンが運ばれ、最後のしめは西瓜のブランデー添え、お茶屋での久しぶりの昼だったが、改めてこの国の食の文化にふれた思いであった。


コメント

1件のフィードバック

  1. 京のお茶屋さんでの、星野先生だからこそ実現する特別なお取り計らいによるお昼食。金襴手の大鉢の「いずうの鯖寿司」、切り子に盛られた「葛きり」、菱岩のお素麺・・・。至福の時間がこちらにも伝わってきます。上質な食の表現に感服いたしました。

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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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