といっても近頃流行りの下品なそれではない。白地に藍一色の正しい浴衣だ。この国の習俗のなかでもっともシンプルで美しいのが、藍の浴衣と信じているが、デザインゆかたと称するパチンコ屋の開店花のような浴衣はとても悲しい。藍はむかしから魔除けになり、肌を守って夏ばてを防ぐ効用があると信じられてきた。祇園の今年の浴衣柄は茄子のデザイン、井上流一門にしか手に入れる事の出来ない限定品だが、この日初めて袖を通し、明日からのお稽古にこの浴衣で汗を流す。
7月7日七夕さまの今朝、花見小路のあちこちからおなじ浴衣の芸妓舞妓が出てくる。紺や朱やひわ色の帯をお太鼓に結び、白足袋に草履を履いて、さわやかながらどこかフォーマルな気分が漂う。昔ながらの日傘をさし、それぞれに八坂さんの石段をのぼり、ご本殿を一周して鈴を鳴らす。タイムスリップした風景である。家元井上八千代師以下全員が登殿し、この夏を無事に乗り切れますよう祈りを捧げる。お祓いののちお神酒をいただき、集合写真を撮る。「みやび会」という夏を迎える行事だ。この日、祇園町は浴衣いろに染まる。
祇園町は浴衣色。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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