関西のお好み焼きに対し、東京は「もんじゃ焼き」と紹介されると不思議な気分になる。江戸の下町に育った僕は、少年期にもんじゃを食べた記憶が無い。そもそも路地の駄菓子やが、メリケン粉を薄くとき鉄板で焼いたのに醤油をかけて、ガキ大将のオヤツにしたのが起源とあれば、始めから大人の味覚に耐えうる食べ物ではなかったのだ。
いま隅田川の中洲、月島西仲通り界隈には90軒もの「もんじゃ屋」がひしめいている。超高層ビルにはさまれ時代に忘れられたような昭和の町並み。町には人は見かけないが、店のなかには湧き出たように粉物大好きの若者たちがたむろしていた。「海鮮もんじゃ」「キムチもんじゃ」「明太子もんじゃ」となかなかに今様なのだが、よく判らないのは「フレンチもんじゃ」、パーティなら「もんじゃ屋形船」がお薦めだそうだし、不況の折から「もんじゃ・ウェディング」などというつましいアイディアもあるという。音も無く吹き抜ける川風、路地のすみにさく紫陽花の花、隅田川中州の昔がかすかに生きていた。
もんじゃは東京代表か。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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