すずらん祭とパリ祭のあいだ…

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 5月1日町中にすずらんの花があふれる。子供たちはバスケツトにいれた花束を売り歩く。モンマルトの角でボッーと立っているとスーツの裾を引っ張られる。あどけない表情をした少年が小さなすずらんの花を買えという。愛を捧げたいマドモアゼルはいないのかと責められているようだ。幸せをわかちあうメーデーのまんなかに愛があるというのが嬉しい。若者たちもメーデーを忘れ、抑えきれない情熱の行方をすずらんに託し、香水をそえて彼女のまえに額ずく。彼女が心動けばキッスで答える。パリの5月の若者たちはどこか浮き浮きしていた。
 そして6月、恋は深まっているのか、それともそうそうに終わりを迎えたのか。7月のキャトルズ・ジュイエ(パリ祭)の街角パーティで二人で踊って、みなに恋の相手を誇らしげに披露するという目的があった。
外人部隊の兵隊さんと小路のマドンナ、ソルボンヌの学生と若い未亡人、女歌手とバーテン等々パリ祭の踊り場は、喜びの広場だった。今ではすべてのスピードが速くなり、すずらんの果実は7月までもたず、6月で終わってしまうと嘆きのメールをもらった。パリ祭から恋をひくと、軍事パレードしか残らない。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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