今年こそ水芭蕉を撮らなければならない。昨年、故中田喜直先生とのえにしで「中田喜直音のオマージュ」と題した7枚組のポストカードを撮影した。幸いにも好評で来年第2集を出版するという。欠かせないのは一番人気の「夏の思い出」。作詞の江間章子がどう勘違いしたか、雪融け水に純白の苞を咲かす水芭蕉を夏の花にしてしまった。
厚い雪が融けて尾瀬ヶ原に木道が顔を出すのを心待ちに、鳩待峠から川上川を下って山の鼻へ出た。あいにくの重い空、日没までに撮れる絵があればと牛首から中田代に向かう。歩いて木道、立ち止まって木道、どこまでもつづく木道。つい一週間まえまで雪に覆われていた湿原に水芭蕉は見事に咲いていた。熊に人間の来ていることを知らせるための鐘が其処此処にある。熊は冬眠中の老廃物をだすための下剤として水芭蕉を食べるという。人間が食べると吐き気がし、脈拍が下がる危険な植物だ。やはり美しいものには毒がある。木道をひたす雪解け水に美しい純白の苞が映る。もう二度とは行けない遠い尾瀬ヶ原の2日間だった。
水芭蕉の尾瀬ヶ原へ。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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