大谷康子さんが軽井沢に演奏にこられるというので、食事を共にした。 ヴァイオロニストとテーブルを囲んだのは巌本真理さん以来のことだ。若々しく屈託のない彼女の口から、前向きの時代を呼吸した言葉か゜つきつぎと弾んで飛び出した。混血の芸術家であったメリーエステルさんの記憶とは180度違う印象だ。長いことコンサート・ミストレスをしてきた彼女の歴史が、ふところの深い暖かい人格を作ってきたのだろう。ちらしに「愛器グァルネリとともに」とあったので、多分楽器の話がでるかと思ったが、最後まで彼女はふれなかった。ストラディヴァリウスの例を見るまでもなく、弦楽器の奏者は楽器自慢が多い。猫が歩いても人間がひいてもピアノはピアノというほどではないが、彼女ほどの腕があれば、楽器自慢の必要はなかろう。オールド・イタリアンのつくった楽器が何故そんなにいいのか良く分からないが、どんな演奏にも耐える名器とあれば湿度の高い軽井沢でも充分に鳴ってくれることだろう。いただいたCDをあとで聴いたが、テレマンのファンタジー一番のラルゴ、プロコフィエフ無伴奏ソナタ、バッハのパルティータ四楽章など、充分に酔わせてくれた。
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す