遠山郷の霜月まつりなどでお目にかかる真摯な学究肌の桜井弘人さんの依頼で、伊那民俗学研究所の所報に「いま、祭が滅びる」という小文を書いた。小見出しは、「祭祀国家としての日本の衰え」「宗教教育を疎かにしてきた半世紀」「経済一辺倒・拝金主義の政治が祭を破壊する」「無形民俗文化財というお役所仕事」「祭りのイベント化」「人形
浄瑠璃・農村歌舞伎の変質」「テレビという無法者が横行する」の七つである。豊葦原の農耕民族は遠い昔のはなし、自分たちの食べる食料もない情報社会とやらに変身して、アメリカが風邪をひけば日本は重病になるという体たらく。リーマンやらモルスタやらシィティコープに振り回され、それでもアメリカ崇拝の若者は多く、ディズニーにはいっても祭りには無関心の多数派には困ったことだ。祭りは危機に瀕し民族のアイデンティティーも失われつつある。
この嘆きの小文に対し、思わぬ反響があちこちからよせられ驚いた。かの巨大な祇園祭から、ちいさな田舎の祭りまで抱えてる問題は共通していて、なんとか声を上げ、いまこそお祭りルネッサンスが必要という認識が溢れていた。
いま、祭が滅びる
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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