パリの東南にベルシーと呼ばれていた見渡す限りの葡萄畑とワインの貯蔵庫村があつた。恐らくオスマンによるパリ大改造のあとに出来たらしく白っぽい煉瓦によって造られたワイン蔵が数十棟連なり、味のあるシックなたたずまいをみせていた。そこにはゴッホの大好きだったフランスの田舎の風景があった。
先月、半世紀ぶりに訪れその変わりように驚いた。かっての葡萄酒蔵は外側を残し中身は総とっかえ、若者好みの流行の発信基地に様変わりしていた。カフェ、レストラン、化粧品、雑貨や、本屋、靴屋、パン屋、チーズ屋、果物や、八百屋、ブティック、エステ、ジム、プール、クラブ、旅行代理店など日常に必要なショップはひと通り揃っている。中央を貫くメイン道路には、かってワインの積み出しに使われた線路がそのまま残されて、歴史を語る。空には大きな彩色テントがいくつも張られ、青空をバックにお洒落なモダンアートをえがきだしている。すぐそばには、大胆な数百メートルに及ぶうなぎの寝床のような大蔵省が作られ、一隅にはシネコン、映画博物館、フィルムライブラリーなどもあって、ファッションに偏らない文化発信地になっていた。若者たちのあいだでは、いま「ベルシー・ビラージュのどこそこで待っている」というのが、定番のデートだそうだ。
葡萄畑から流行発信地へ
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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