紅茶と階段

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主役は紙またはガーゼに包まれた少量の紅茶、糸紐で首つり状態になっている。添えられてくるのはあいまいな温度のポットのお湯。カップは妙に肉厚の安物。パリのカフェで紅茶を頼むとだいたいそんな組み合わせで運ばれてくる。あの紅茶が大嫌いなので、なるべくサロン・ド・テと呼ばれているティ・サロンに行くように心がけていた。さいわい泊っているホテルにレトロなパリの人気サロン・ド・テがあった。ライブラリー風の二階まで吹き抜けのゆったりした空間、中央の螺旋階段によって上下は結ばれている。紅茶は緑茶、フレーバーティー、ハーブティー、イングリッシュティー総てが揃い、オーダーによって陶器、磁器、ガラス、鉄器が使い分けて入れられてくる。スイーツもエクレアなどのクラシックなお菓子からショコラ、マカロンまで揃ってお茶の時間を楽しめる。深夜12時まであいているので、オペラの帰りにも間に合う優雅なアン・テ・リュ・スクリーブなのだ。18段あるあの螺旋階段を上がったり、降りたり、ひとりの客にメニュー、オーダー、水、紅茶、スイーツ、精算と最低6回は上がり降りしなければならない過酷な労働(一人の客に216段)に笑顔を絶やさずスタッフはサービスに当たっている。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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