来日したのは、ウクライナ・グランド・バレエ団、ウクライナと名前がつけば確実に客がつくという目算のもとに結成されたニワカズクリのバレエ団である。
作品タイトルは「Swan Lake on WATER」、水浸しの白鳥の湖である。
日本でも夏になると「本水使用」の興行はある。レビュウだったり、歌舞伎だったり、猛暑・酷暑の折から部隊で本水を使えば、話題にもなるし、役者の心意気も伝えられて満員御礼間違いなし、という夏舞台興行宣伝の手法なのだ。
もともと白鳥の湖というバレエ作品は、くるみ割り人形、眠れる森の美女と共に三大バレエといわれ、バレエ入門のイロハといった作品である。
ヨーロッパのバレエ先進国では、定番ものとして子供、ファミリー公演には登場してもいわゆるバレエ愛好家のみるシーズンにはあまり上演されない。
日本のような遠いアジアの後進国でこその人気演目である。
その白鳥の湖を本水をつかつて演ずるという。
バレエ・シューズまたはトウシューズを履いて踊るバレエという表現様式にとって、水という演出は無理ということぐらいは子供でも判る。ケレンを通り越して無茶、無茶苦茶といったアイディアである。
話題のためとはいえ、振付を全面的に見直して作品をリフレッシュさせるなら理解できるが、振付をそのままに舞台装置として本水を使うなどというはナンセンス以外のなにものでもない。
トウシューズは水のなかでたちまち破れるだろうし、コールドバレエはおっかなびっくりで群舞の美しさはガタガタになる。
こんなとんでもない演出で、商業的公演をしてあるくのは、ウクライナの悲劇にとって恥の上塗りでしかない。ウクライナの悲劇として、バレエ人が集まって公演をもつのは理解できるが、作品創造の視点の欠けた同情利用の商業公演には賛成しかねる。
水浸しのバレエ「白鳥の湖」
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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