顔パスはみんないい人

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  「あいつはいつも顔パスを使う」という響きには、いくらかの羨望と嫉妬とやっかみが含まれる。
 親爺の口座を自慢げに使い込む仲間、秘かに一族の名前をだして特等席を獲得する奴、そうした連中はいつも子分を従えて、放課後の駅前通りを支配していた。子分たちは顔パスのおすそわけにあずかり、うわべだけの服従に唯々諾々と従う。催し物に無料入場したり、私バスに無賃乗車してみたり、大きな犯罪ではないささやかなイタズラに日々を費やした。
自販機.jpg
 10日ほど前、「お~いお茶」の伊藤園が最新式の自動販売機を導入すると発表した。
 顔パスで買える自販機である。あらかじめ顔写真とクレジットカードを登録しておけば、いつでも「お~いお茶」が出てくる。
 機械は所詮機械だから時に壊れたら、自販機前は「お~いお茶」の海になるかもしれない。
 時代の波はIT化にますます進み、キャッシユしかお金と理解できないデジタル難民が増えるとどうなってしまうのだろう。
 顔パスを不道徳と心得るおじいちゃんとおばあちゃんは、何処へ行くにも自販機のまえを避けて遠回りのお出掛けにかるのかも。
 うっかり自販機の前を歩いて、勝手に「お~いお茶」が出てきたら一大事、とても困るからだ。
 おじぃちゃん、おばあちゃんのためにもう少し自動販売機の導入を待っていただけないでしょうか。
 伊藤園さま、なるべく早く死ぬようにしますから。……南無阿弥陀仏


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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