菜の花はあっても菜の花漬のない信州

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 「菜の花畑に入り日薄れ……」と高野辰之が歌ったのは北信州の早春だつた。
 北信州の人達は菜の花畑の情景は眼にやきついているが、菜の花漬の旨さをしらない。
 春の香りとほろ苦さを競って味合うのは京都の人達だ。二月になると漬物屋さんの店先を覗き、この春の菜の花漬は?と尋ねる奥様方で錦市場は華やぐ。食卓のすみに控える菜の花漬に春の到来を感じるのだ。
 二月二十五日には北野天満宮で梅花祭が開かれるが、別名”菜種供養”である。神主さんがうち揃って冠に菜の花をつけて奉仕する。菜の花の菜種が菅原道真公をなだめると言われている。
 庭の片隅に黄色い花が咲くと、ああ春は間近いなとほっとする。
 春の花は黄色からやってくる。
 ほのかな香りとほろ苦さが菜の花の味だが、暖かい美味いメシに菜の花の漬けたのがあれば他はなにもなくていい。
 信州に菜の花畑はあっても菜の花の漬け物がないのがくやまれる。 


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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