魚の道を白馬が走る

　信州には「塩の道」がある。
　京都には「さば街道」がある。

　パリには「魚の道」があった。
　フランスの北の漁港ブローニュ・シュル・メールの魚や大通りから、パリに向かって毎日獲りたての魚を運んでいた。　
　１３世紀から１９世紀中頃まで、鉄道が引ける前は３００キロの道のりを馬を取り替えながら２０時間前後の時間をかけて、パリの中央市場レアールまで運んでいたのだ。
　五頭の白馬によって運ばれていた。白馬はサラブレッドのような痩せたスマートな馬ではなく、今日北海道の「ばんえい千歳」にみられるような堂々とした馘と胴が太く、足も短く太い挽馬といわれる労働馬なのだ。
　このほどこの白いバンバ４００頭による「ルート・ドュ・ポアソン(魚の道)２４時間耐久レース」が開催された。
　かっての宿場、宿場で大切に育てられてきたバンバ達は20０年ぶりのパリ御目見えとあって、ヒズメにマニュキュアしたり毛並みをととのえて大張り切りの参加レースだったと伝えられている。
　パリ市長はじめ出迎えにでたが、白馬たちの走力が二時間も余計にかかり、残念なことに花の首輪はかけられなかったという。
　白馬たちはかって汽車や自動車によってパリを追われたが、大氣汚染のない馬への需要が復活し逆に白馬によって自動車が追われる時がくるかもしれないと、メディアは洒落を飛ばしている。