パリのギメ美術館は、戦後ルーブル美術館の東洋部門がそっくり引越し、現在ではルーブルの東洋美術館として機能している。
そのギメ美術館でいま開催されているのが、「広重の雪景色と川端康成の雪国」をテーマにした展覧会である。
浮世絵の断面と川端文学の世界を結び付けて展覧するアイディアは、肝心の日本人になくて、フランス人にあるというのがとても面白くもあり、反面不思議な感じでもある。
あらためて広重の雪景色をみてみた。
一枚は「深川洲崎十万坪」細密な鷹のアップを上に配し、遠景に洲崎の里に雪が積もっている。当時洲崎は文人墨客の遊里でもあった。左の隅に雪をかぶった洲崎の里が描かれている。人は描かれていないが、この里を愛した江戸の風流人が、この屋根のしたで一時のぬくもりを楽しんでいた情景が想像できる。
川端康成雪国の序章と見事にかぶってくる。今までそうした見方をしたことがなかったが、フランス人の眼には時を超えて広重の雪景色と見事に二重写しになったのだろう。なにげなく見ていた洲崎十万坪に江戸っ子の営みが生き生きと浮かんできた。
「木曽路之山川」にしても、「木場の雪景色」にしても、広重の雪景色には描かれていない人間の息ずかいがあることをきずかされた。
PARIS MUSEE GUIMET ギメ美術館 6 place d’i’ena 75012 PARIS ~10月12日迄
コメント
プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
コメントを残す