冬の京都は大根を炊くことから始まる。
ひとつ、ふたつではなく、京都市中あちこちのお寺さんで大根を炊き、その日訪れた信者さんに振舞う。
江戸っ子の冬大根は、おでんの主役で出汁をしっぽりとすった大根は暖をとる食としてかかせないが、都では大根は信仰になっている。
さて京都の大根炊きだが、あちこちのお寺さんの内、第一の大根炊きは嵯峨覚勝院「聖天様の大根供養」である。
元来聖天様というのは、ヒンズー教の神様カネーシャという「歓喜天」のことで、人生の喜びを司る神様である。
その聖天様が大好きなのが、酒と団子と大根で、それなくば人生の歓喜、悦楽はないというのだから、なんとも粋で色っぽい。
白い大根は女体を想像させ、地方によっては二股大根をご神体に、子孫繁栄を願っているところもある。
それほどセクシャルなイメージの大根だが、これを食して煩悩の毒を除き、もろもろの艱難をのりこえて、初めて聖天様の満願となる。
大根役者と呼ばれる芝居下手の役者は結構いる。芸のこやしと称して女遊びは達者だが、肝心の芝居は下手という役者のことだ。
近頃スキャンダル・メディアのお蔭で、芸の優劣ではなく色事で売り出したり、女房の病で売り出したり、多目的トイレの使用法で没落する世の中だが、大根役者こそ大根焚きをして、無邪気なファンにふるまったらいいのではないか。
「海老蔵の大根炊き」とか「ジャニーズの大根炊き」とか、話題沸騰すること必定である。
聖天様の大根焚き
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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