正月のご挨拶が済むと、大きな朱漆の盃でお屠蘇をいただき、初めてお重を開く。そんな嬉しさもコロナとともに何処かへいってしまった。
古女房の顔を見ながら、クロネコのお蔭で手元に届いた祇園川上さん心尽くしのお重をいただく。雑煮は銀閣寺なかひがしさんからの白味噌である。丸餅は軽井沢のスーパーにはない。友人の愛息の嫁の実家から送られてきた今治の丸餅が実に美味しかった。金沢浅田屋の雑煮も小伝馬町の親分から届いた。
正月は友人の好意にあまえて過ごす、贅沢な難民のような日々であった。
コロナのお蔭で親戚の娘もあらわれず、近くに住む少女も受験とやらで姿をみせない。恒例の歌舞伎中継と箱根マラソンで無為に過ごした。
普段は飲まないSAKEだが、正月となるとなんとなく飲みたくなる。
一陽来復の願いか、悪疫退散の祈りか、日本酒には昔からの呪術がこめられているような気がする。この気持ちはワイン党やらシャンパン党にはわかるまい。
正月料理には灘の男酒より、伏見の女酒が似合う。なめらかできめの細かさが、絹のきものに袖を通した女性を思わせ、ナイーブな優しさが伝わる。
京都北山には「初日の出」なる銘酒がある。岩手には「七福神」がある。静岡の「開運」、茨城の「宝船」、金沢の「吉祥加賀鳶」、それぞれに工夫を重ね、正月の気分に合わせた酒があるのが幸せだ。
パリのベルニサージュでも一番人気は日本酒、共に置いてあるワインよりシャンパンよりも、パリジェンヌ達の手は金粉入り賀茂鶴にむかった。
男酒・女酒の存在になにより興味をしめしたのは、フランス人だった。
正月は女酒
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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