「時代錯誤」という言葉がこれほど似合うTV-CMはほかに見当たらない。
木村拓哉を起用したニッサンの車のコマーシャルである。コマーシャルであるから、車のイメージをアップするために、莫大な金を使って製作する筈だが、このコマーシャルはどうみても販売促進のプラスにはならない。ニッサンの足をひっぱるために制作されたのではないか、とさえ思える。
大手の代理店がついて、広告ディレクターやらデザイナー、カメラマン、さらにコピーライターまでついて作られたにちがいないが、今時のスタッフがこの設定に満足して制作したコマーシャルとは到底信じられない。時代を知らないスポンサーのお偉さんのゴリ押しで作ったとしか思えない。
そもそもキムタクという選択が不思議だ。いまのキムタクに新車をイメージさせるのは、まつたく不可能である。われわれ世代ですらそう思うのだから、若い電気自動車世代には違和感しか残らないだろう。短い脚でのムーン・ウォークは30年前に引き戻される。指パッチンでハンドルを握るなど半世紀まえの湘南族でも恥ずかしかった。キムタクの演技ひとつひとつが、こんなクルマは買いたくないし、乗りたくないと思わせるに充分なのだ。
ニッサンの広報はヤキがまわってしまったのか。
最後の仕上げが「やっちゃえ、ニッサン」一人称なのか三人称なのか意味不明。キムタクの自己満足とニッサンの時代錯誤が入り乱れたカオスのTVコマーシャルである。
こんなコマーシャルをつくっていては、日産の再建は絶望的ではないか、とさえ思われる。
キムタクと日産の時代錯誤
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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