おいしい浮世絵

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「おいしい浮世絵展」が六本木で開かれている。
 浮世絵という庶民のための版画だから、そこに「おいしい」シーンが描かれていて当然だが、いままで「おいしい」視点で集められた版画展をしらない。
 つい最近も今様のフライパンをふつて無国籍料理をつくつているバッチリメークのお姐さんが、「キッチン・アーチスト」と呼ばれていることに驚いた。「アーチスト」というのは、絵画、彫刻などの名人上手に捧げる敬称とおもっていたが、最近ではコックや美容師までもアーチストと称するようになった。
 浮世絵の凄いのは、彼らにはアーチストなどという気負いはなく、市井の絵師として版元の要求に応じ、日々の暮らしのすべとして絵を描いていたことだ。
 三代豊国の「見立源氏はなの宴」には花見のはなやかな料理が広げられている。
 国芳の「縞揃女弁慶 松の鮨」には美味そうな寿司が描かれ、
 北斎漫画十二編には鰻がダイナミックに描かれ、
 江戸っ子にとっての食は、鮨、蕎麦、鰻、天ぷら であることが再認識される。
 両国柳橋の広重描くところの河内屋には、大川の風景共々江戸の料理屋の豊かな文化がよみとれる。
 「季節のたのしみと食」「にぎわう江戸の食卓」「江戸の名店」「旅と名物」と四部に分かれた展示も判りやすく、難解なモダンアートの展覧などよりはるかにリアルな「おいしい浮世絵展」になっている。
 「おいしい」「マイウ」とテレビに氾濫するグルメ番組に時をつかうより、はるかに貴重な時間の流れている「おいしい浮世絵展」であった。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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