今日8月一日は「八朔」といい、祇園甲部では夏のお正月になる。
芸妓舞妓衆はみな黑の絽の紋付を着て、日頃お世話になっているお師匠さんやらお茶屋さん屋形をまわってご挨拶をする。おねぇさんに連れられて花見小路から切通しを抜け、井上流お家元へのご挨拶に始まるのだが、お披露目まもない舞妓さんにとってはこの夏のさかりの厚いなかを正装して挨拶回りとは、忍耐そのものに違いない。
この日襟足の化粧も普段とは違う。都踊りの銀襖の幕開けやら、黒紋付のときの襟足は三本足に化粧する。恐らく黒にたいして3本の襟足がスッキリみえて映りが良かったところから三本になったと推察されるが、出たての舞妓さんにとってはそんな約束事も新鮮に映っているのかもしれない。
とにかく若さに映る絽の黑はとてもシックに夏のさなかの白い襟足の三本はすっきりとして、なかなかである。
この日パパラッチ共は、切通しから門前に抜ける巽橋の辺りにカメラを構えて芸子たちの出陣を迎える。シャツターチャンスといっても行き交う芸子衆の脚を止める訳にもいかずなかなかうまくいかないのだが、おねぇさんを先頭に一門うち揃っての正装はないので、祇園甲部のパパラッチにとっては絶好の撮影日なのだ。
今年は武漢コロナのお蔭で、八朔の礼も中止とか。軽はずみの新しい日常とやらで、こうした通過儀礼は無くならないことを祈るばかりである。
祇園甲部 八朔の三本足
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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