蕎麦好きの蕎麦ざる

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黒竹そばざる.jpg
 蕎麦好きなので、あちこちの蕎麦やにいく。
 東京での蕎麦や巡りも充分したのだが、それでも蕎麦やに行きたがる。
 六本木にいたころには、麻布更科にずいぶんと世話になった。ホーム・パァティーに御前そばの50人前をもってきてもらったこともあった。
「いらっしゃいいいぃー」で迎えてくれる神田のやぶも懐かしい。久しぶりに12月は蕎麦にいこうということになって、淡路町の松やか、麻布十番の堀井更科、どちらにしようかと相談がまとまらない。結局わかりやすい堀井更科で令和元年の蕎麦終い、という結論になった。
 美味い蕎麦やの蕎麦ざるはなかなか良いということに気がついた。取り寄せの蕎麦には念をいれても、我が家の蕎麦ざるはすこし残念なのだ。もう何十年も使っているのだから、この際、ふだん使いの蕎麦ざるを奮発しようということになった。
 国産の竹造りに限る。日本の竹は工芸においても実用でも最高の素材といえる。茶道具から花器、花入れ、バスケットに手提げ、背負い篭、シャンデリア、日常の普通から超高級まですべてに対応する素晴らしい素材だ。
 端正な竹の網目の美しさ、使い込めば使い込むほどの艶、直線に曲線にすべてに順応するシナやかさ、まるで恋する女性のような、古女房のような、しなやかで丈夫な個性の持ち主である。
 さて蕎麦ざるだが、マルとシカクでは丸にきまっている。直径は21cmから22cmほどがいい。網目が美しく繊細で少しばかり個性的なザルがいい。シロ竹、アオ竹、クロ竹、虎斑竹、色はそれぞれにあるが、いまさら青竹の蕎麦ざるでは面白くないので、結局決まったのは「黒竹・戸隠風・蕎麦ざる」 工人によれば、竹を騙しながら美しく編み上げるのが、腕の見せどころだという。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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