「フューネラル・ビジネス・フェア2019」が開かれた。
なじみのない言葉なので、フューネラルとは何? 検索したら葬式・仏具などが出てきた。業界ではここ数年来使用につとめ、認識率をあげたい単語のようだ。
高齢化社会になって、考えてみれば当たり前のビジネスかもしれないが、いかにも日本人の細かさがでているようであまりいい感じのしないビジネス・フェアである。
主催者は「社会全体のコミュニケーションが希薄になって、大きいお葬式も無くなる傾向にあります。せめて自分と家族のために、それらしい葬式をあげたいという処に、フューネラル・ビジネスのニーズがあります。」
もっとも衝撃的だったのは、死装束つまり仏衣のプレゼン・コーナー。
いままでの白い死装束ではおじちゃんが可哀そう、おばあちゃんが可哀そう、もうすこしお洒落にしてあげたいという遺族が多いのだそうだ。そこで登場してくるのが、タキシード・スタイルの仏衣、ジャニーズ風のおじいちゃんというより、手品師風のおじいちゃんにちかい。おばあちゃんにもお洒落をとなると、おばあちゃんの大好きだったフランス人形のドレスをということになって、ウスラピンクのロングドレスでは、ますます死出の旅ならぬ死出のコスプレになる。
そのうちフューネラル・ファッションはパリ直送のサンローランでとか、上品で格調あるディオールはいかか゛、ということになるかもしれない。
骨壺の華やかな変化にも眼をみはった。故人の好きだった薔薇の花のえがかれた骨壺や、ペットとお揃いの大小でヒヤシンスの花が描かれている。新婚旅行思い出のハワイ、ワイキキ・ビーチの夕映えに抱かれて、パパと一緒の骨壺なら、とてもシアワセというのもあった。
骨壺とともに華やかになったのはいわゆるヒツギ棺桶である。ヴェルサイユ宮殿みたいのからお花畑まで千差万別、生きながらのカルチャア・ショックだった。
ラクテンにも、と検索したら、エンディング・ドレスの通販がぞくぞくと登場した。死に装束とか天冠は死語で今はエンディング・ドレスとか、エンディングガウンというらしい。三角の白布のついた標準鉢巻きはみつからなかった。一式3000円位のコスパに優れたのから、高級感たっぷりの30万円ぐらいまで選択のはばは広い。
どうせ燃やすのだから、それまで来ていた衣裳でいいのではと、つぶやいていたのはスタッフであった。
死装束ならぬエンディング・ファッション
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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