「歌舞伎」の著作権登録が際限なくひろがっている。
02年には、かつお節、寒天、焼き海苔、肉、乳製品、カレーなど食品全般、16年には寝具、家具、化粧品、ガラス製品、調理器具など台所用品、など更に16年6月には、映画、演芸、演劇、音楽の演奏、興行の企画、運営、演劇の演出または上演についての商標出願、18年3月には爪切り、剃刀、スプーン、フォークなど日用品についての商標出願。等々……目につくかぎりの商標出願を松竹はしている。
歌舞伎という言葉のそもそもは、歌舞伎者といった江戸期の遊び人への呼称からきていることは周知の事柄だが、転じて興行の呼称となり、大歌舞伎、小歌舞伎、旦那歌舞伎、農民歌舞伎、女歌舞伎等々、日本中にひろがったものだ。長野あたりでも、大鹿歌舞伎、中尾歌舞伎、下条歌舞伎、祢津東町歌舞伎とある。
こうした全国にちらばってある素人歌舞伎までいちいち商標権を振りまわして著作権料を徴収するとなると、ついこの間まであったヤクザの地回りと何ら変わることはない。
お国はこうした現実をふまえて登録申請を審査してほしい。不用意に登録を受付けるということは、庶民の文化を弾圧することになる。伝統芸能として昔からつづいているものや、民俗芸能については除外例として認証すべきだ。
これはあきらかに差止めたほうがいいという例もある。
ジャニーズの滝沢歌舞伎などというのは、非常識の極みだし、ままアングラ演劇にも破廉恥な歌舞伎を詐称した公演がある。プロレスのグレート・カブキもいらない。歌舞伎揚げに歌舞伎せんべいはどうなのという声もあるが、こうした商業活動での歌舞伎使用はケース・バイ・ケースだろう。松竹の登録以前から存在し、市民権をえているものについて権利を主張するのは許されない行為である。
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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