にほんのスイーツ「大学芋」

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 秋とともににほんのあちこちで芋の食味会が始まる。
 山形の芋煮、今朝のテレビでは里芋の盛大なまつりをやっていた。秋は芋の季節だということを改めて認識した。
 「焼き芋~ヤキイモ」という掛け声もきかなくなった。若い女性スタッフが焼き芋の声に、外へ飛び出しホカホカの焼き芋とともに、興奮した面持ちで帰ってきたムカシがなつかしい。焼き芋は田舎のシアワセ、家族のシアワセ、3時のシアワセ、いろいろなシアワセをはこんできた。
 いまではおやつのケーキになってしまった。スポンジの上に色とりどりの果物やらアイスクリームの様々がのって見事だが、少しうるさい。菓子職人はパテェシィエとやらに変身し、フランス語など操ってシャレタ名前のケーキが主役の座にすわっている。
 サツマイモを一口大の乱切りにして低温の油でじっくりと揚げ、それに密をからめて黒ゴマをまぶしただけのジャパニーズ・スイーツ……それこそ日本一のスイーツ「大学芋」だ。いや世界一のスイーツ「大学芋」かもしれない。パリ・サクレクールの丘の絵描きさんの広場あたりに、このジャパニーズ・スイーツ「DAIGAKU-IMO」などだしたら成功間違いなしだろう。
 昭和の初め、帝国大学(今の東京大学)の学生が学費捻出のためサツマイモを加工して売り出したのが、「大学芋」の始まりとか、赤門前にあった三河屋というふかし芋やさんが、大正の初めに売り出したのが、人気をよんで「大学芋」になったとか、諸説いりみだれているが、それほど簡単に加工できたにほんのスイーツということだ。
 小生の大学芋は、浅草言問通り・花屋敷の裏あたりにある「千葉屋」揚げたてアツアツの大学芋である。ごま油の風味がのこる絶妙な揚げ、密の美味しさ、芋は茨城県産の紅あずまと聞くが、にほんいちの大学芋完成形がここにある。400グラム700円というのも嬉しい。
 おやつの「ふかし芋」も亡んでしまった今、デスクが買ってきてくれたセブンイレブン製「まるで大学芋なオールドファッション・ドーナッツ」でせめてもの懐かしさをいただく。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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