フランスのお金持ちはみんなベルギーへ引っ越す。
ルイビィトンのオーナーも、ルノーのプレジデントも、そして友人のトム・ウィルソンも、みなベルギーへ引っ越した。欧州連合の首都であり、EUの首都だから、そんな理由ではリッチ層はうごかない。パリからは電車で一時間ちょっとだから、クルマでかよっても通勤圏内なのだ。
理由はひとつ、節税のためと、ベルギーの首都ブリッセルは、世界遺産としての美観と自然に恵まれている。首都の中心部から10分も走ると、自然遺産となったソワーニュの森、カンブルの森が何処までも続く。
その森の中に富豪たちの家が点々とある。ロスアンゼルスの郊外、ビバリーヒルズの高級住宅街と似ている。どの家も1000坪以上の敷地を持ち、それぞれ個性的な住まいに暮らしている。
ノイハウス、ゴディバ、ピェール・マルコニーニ、ヴィタメール、レオニダス、ガレ など名だたるチョコレート・メーカーはみなベルギーというのも不思議だ。ヴィクトルユーゴーが世界一美しい広場だと感嘆したブリッセルのグラン・プラスには、市庁舎をはじめ、王の家、楽器博物館、ビール博物館、星の家には触れると幸せがついてくるセルクラースの像などあるが、あいだにある小さな館は、ほとんどチョコレート・ショップと徹底している。
ウィルソン家では、初日からトムさんがモスクワから携えてきてくれたキャビアのご馳走攻めにあった。
キャビアは革命50年の年、当時のソ連から招かれ、アエロフロウトの機上で山盛りのキャビアを賞味して以来、今回のブリッセル行で二番目のキャビア攻めだった。
クリスタルのコンポートに山盛りのキャビア、直径7センチほどのいっぱいのブリニと、薄くカットした食パンの6センチ位のトースト、たまのホテルのパーティに登場するキャビアとはまるで違って、毎日ガーデン・ハウスのテーブルにはキャビアが置かれていた。至福のキャビアがいつでも食べ放題という心尽くし、3日間のウィルソン家滞在ですっかり英気をとりもどした。
オードリー・ヘプバーンも、ルネ・マグリットもみなこの地に生まれ育ったんだと、軽井沢のウグイスに似た鳥の声を聴きながらブリッセルの森とお別れした。
キャビアとブリッセルの森と
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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