働き方改革があちこちで物議をかもしている。
特に外回りが中心の営業担当者や、取材に明け暮れるメディアの人間たちは、喜んでいる少数派と迷惑千万という自律派に分かれる。
わが人生は子供と女房が生き甲斐という人にとっては、こんな嬉しい改革はない。基本仕事に興味はない、プライベートな時間こそが喜びの源泉、社会への貢献は仕事ではなくボランティアという不思議な人々である。こうした人々に、女房・子供がすべてというからに、生殖と和合があなたの人生ですね、などと言おうものなら眦をたてて噛みつかれる。
給料は上げろ休みも寄越せ、では社会がもたない。かっての共産圏ソビェトはそれで瓦解したのだ。資本主義社会は、仕事を含むあらゆるものに競争原理がないと維持できないという単純なことが理解できていない。
仕事大好き、仕事が趣味という人にとって、働き方改革ほど迷惑なはなしはない。日本は夜でも、地球の裏側は昼なのだから、夜中でも働くよ、このドラマの収録はあと3時間あれば終わるので、やってしまおうという、今張り込み中だからもう少し頑張ろう、という根性はすべて拒否される。そんなに働いてどうする迷惑だからさっさと帰ってくれ、ということになる。
NHKでは働き虫にGPSをつけることになった。スタッフの労働時間をすべて監視し、管理することになった。これからは疲れたからカフェで一杯とはいかない。すぐに本社の働き方センターにバレテしまうのだ。社用のハイヤーで恋人を送っていくことなど夢のまた夢、GPS様のお許しの範囲でしか動けない。
世の中はますます窮屈になり、ゆとりのないつまらぬ世界になってから、なげいても間に合わない。
GPSのもとで人生をおくって幸せなのだろうか。
GPSに奪われる人生の喜び
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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