軽井沢駅に遊園地はいらない

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軽井沢駅に遊園地はいらない
 北陸新幹線の一見立派な駅舎のかたわらに、大正・昭和の香りのする旧軽井沢駅舎がある。
 町は保存し、町民に開放しないことで、この駅舎の佇まいを守ってきた。ところが2、3年前どうしたことか、しなの鉄道に貸し出すことになった。
 経営不振のしなの鉄道は、この軽井沢の玄関にある旧駅舎を中心に楽しい駅ナカに一新して23日に全面オープンする。
 構内に子供向け遊具をおき、森の小リスキッズステーションin軽井沢を整備し、一周120メートルのミニトレイン森のコ小リス電車を一回200円で走らせる。野菜や果物を売る小リスのマルシェやら、プラレールであそべるようにする。社長は「家族3世代が楽しめる懐かしくて新しい駅になる」と胸をはっているが、冗談もそこまでにして欲しい。
 軽井沢の顔になる駅に子供目当ての遊び場を作って、軽井沢のイメージを悪くしようと企んでいるとしか思えない。軽井沢は本来大人の保養地であり、文学の里であり、自然とともに静かに時を過ごす別荘地の筈である。その軽井沢の顔に子供遊園地を作るとは、世間の風潮に竿さした悪い趣味だ。どこかの邪悪な代理店が、アウトレットの家族連れに眼をつけ、子供需要の必然性をもっともらしく理屈の通った企画にまとめ上げたのではないかと、疑いたくなる。
 しなの鉄道は開業20周年の記念事業として、4億円を投じて作ったそうだが、軽井沢のイメージをさらに安っぽくする企みであることに間違いない。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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