信州旅館ホテルのベスト・スリー

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 友人から信州のホテル・旅館ベスト3の問い合わせがあった。
 僕らに聞かなくとも沢山の旅行誌や情報が出ているので、それでお好みを選ばれたらと返事をすると、いやどこまでが広告掲載か、本物かの区別がつかない。かってルポ形式の記事を信じて旅をしたところ、まんまと騙された。あの思いは悔しいので、本当のところを是非聞きたいという問い合わせだった。
 広告出稿とのバーター記事がほとんどなので、情報誌の情報は信用できない、だから君に聞きたいという問合せだった。
 それでは信州の二つの旅館と一つのホテルをご紹介するということになった。
 まずひとつは信州の南端にある昼神温泉から「石苔亭いしだ」
 立派な能舞台のある隠れ家のような山麓の宿だ。まず迎えてくれる恵比寿門に驚く。堂々とした佇まいはこの宿の心と歴史そのものを突き付けてくる。そして玄関をはいると橋掛かりのある本格的な能舞台が迎えてくれる。春には二千体の雛飾りで満たされ、おもてなしの狂言やら伊那谷の民俗芸能にふれることができる。湯良し、食良し、文化のかおりがいっぱいの昼顔の湯宿である。
 二つ目の宿は中信・仙仁温泉の「花仙庵岩の湯」
 須坂から菅平に抜ける峠の入口に位置している。東屋風の入口をくぐり仙仁川を渡ると宿の玄関に至る。東山に抱かれた京都の料亭にも似たつくりが嬉しい。宿のなかにはいたるところに書斎あり、休みどころがあって、旅人のくつろぎを考え抜いた空間にあふれている。もてなしとはこういうところからしか生まれてこない、という宿のつくりなのだ。
 湯自慢は30メートルにも及ぶ洞窟温泉、ライトアップされた庭の散策も楽しい。
 ホテルはためらうことなく白馬の「ラ・ネージュ東館」をあげた。森のなかのホテルというのはこういうホテルをいうのだ。樹木一本一本を計測してその森と共存できる設計をかんがえている。森に無理やり持ち込んだモダンなホテルは随分あるが、ここは初めから共生し調和した建築になっている。ヨーロッパのマナーハウスのような品位と格調のあるロビーから、レイノーの食器、ベッカーハウスの家具、すべてが世界の一流で満たされている。そして圧巻のステンドグラス、森の中のウッドデッキと最上のホテルライフが約束された本物がここにある。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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