「いいね」がすべての馬鹿者たちへ

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「いいね」がすべての馬鹿者たちへ
 レストランで食事しても、ディズニー・ランドにいっても、目的はインスタ映えのする写真をとること。SNSに投稿して「いいね」がいくつつくか、それが最大の関心事だという。「いいね」はそうした人々の存在証明になるらしい。つねに他人からどうみられているか、どう思われているか、そのことばかり気にしている小心な若者達が圧倒的に多い。
 もっと主体的に考えたらいいとおもうが、すべて他人の評価次第では、視聴率に縛られた地上波テレビとなんら変わるところはない。いや生まれたときからテレビがあった世代にとっては、「視聴率」と「いいね」が同じ存在なのかもしれない。
 すぐる日、ある会議にでた。20人近い出席者が全員目の前にマイパソコンを開き、じっと画面に見入っている。司会が議題を述べ、検討にはいってもなんの発言もない。みなキーボードを触っているだけ。折角集まって会議を開いているのだから、全員の意見を聞きたいと思っているのだが、なんの発言もないまま、会議は粛々と進んで行く。
 しゃべらない、人の顔を見てしゃべらない。発言もしないし、本音もいわない。甲論乙駁などまったく存在しない。表面的なまったく表面的なおそらく損得勘定だけの会議であった。コミニュケーションのとれない若者とはこういうものかと理解した。
 「いいね」集めに熱中することに批判があるのは知っています。ネットよりリアルで頑張るほうが大事だ、とさんざんきかされました。でも「いいね」が沢山集って「風」がおきると皆がそれになびいて動くんです。人を動員するツールとして、今は「いいね」の数やフォロワー数がいちばん大事で、これをやらないと損するんです。…そう、君たちとは話が通じない。勝手にしたら…。
 そのうち喧嘩をしたり、悪口を言ったりすることのなかで、人間の本質とか、愛に目覚めていくんだ、ということが理解できるようになるよ。感嘆相照らさずトラブル逃避だけを心がけて、君はそれでも人間かね。安いカメラの自撮りでいくら「いいね」をもらっても、まったく無価値ということにいつか気がつくだろう。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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