京の夏はお千度に始まる

by

in

京の夏はお千度に始まる
 軽井沢にもようやく暑い夏がきた。
 テレビでは盛んに今日は七夕まつり、園児たちが可愛い七夕飾りを作っています、と何十年変わらない子供報道を続けている。多分テレビの報道マンは、大人の七夕祭事をしらないのだろう。知ろうとしないのだろう。だから地上波のテレビばかり見ていると馬鹿になると言われるのだ。
 京都の夏は、祇園の芸舞妓たちの集り、みやび会お千度に始まる。
 今年は7月7日、祇園甲部の芸舞妓一同が、浴衣すがたに身をやつし、八坂神社にお参りする。集合時間は朝10時、それぞれに御茶屋や置屋からお姉さんとともに八坂さんに向かう。
 新調した今年の浴衣は白地に藍のひょーたんをあしらった柄、それに井上流の井菱の紋の白い帯をきりっと結んだ、昔ながらの浴衣姿がなんとも涼しい。
 ご本殿の脇には、祇園みやび会の幡が立てられたテントがしつらえてあるが、まずご本殿正面に向ってお参りし、時計回りに三回本殿を周る。お千度が歴史の時間とともにお三度になってしまったのだ。それを済ませ、ご本殿に登壇する。井上流家元が神官より御榊をいただき、一同打ち揃って拝礼をすます。祈るのは、芸の上達と無病息災と決まっている。この時ひそかにカレに思いをいたしたり、ゲームの勝運を祈ったものは、早晩祇園の廓から消えていく。
 お盃をいただき、東の楼門まえに集合して記念写真をとる。何十年ものあいだ、同じ石段に決められたようにならんで撮る写真、それが伝統というものだ。
 これで一旦はみやび会お千度は終わったかにみえるが、そうではない。芸舞妓一同、三々五々四条河原町の高島屋さんに向かう。高島屋でサンドイッチをいただく。アルコール抜きの精進落としのようなもの、高島屋さんのサンドイッチまでが祇園みやび会お千度である。
 お千度が終わると、それぞれのご贔屓筋や日頃お世話になっているお料理屋さんなどに今年の夏うちわをもってご挨拶に伺う。うちわには館の名と芸舞妓それぞれの名前が書かれている。いただいたうちわは客寄せの縁起物として玄関先や店先に飾るのが、都の習わしでもある。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


カテゴリー


月別アーカイブ