テレビ局のふところが寂しくなって、やたら眼につくのが「お散歩番組」である。
お散歩する人が一人いればいい。あとは下請けのカメラクルーだけですべて完了、こんなにコスパに優れた番組はない。カメラも最近はとみに小型化し、メインカメラ以外は、民生用のオモチャみたいなもので結構間に合う。ロケも経費節約で徹取り早く効率のいい場所を選ぶ。お散歩が下手なタレントならば、後から別どりし、無料の局アナで尤もらしくナレーションを入れる。
こうして経費優先でつくった番組が、間違って当たれば、テレビ局にとってこんなに美味しいことはない。
そこで散歩させるのは誰、ということになる。
鶴瓶の「家族に乾杯」などは、わざわざもう一組作って無駄使いする制作姿勢なので、所謂お散歩番組とは言い難い。
「ブラタモリ」もタモリの主観的興味を中心に作られているので、お散歩番組とは言えない。
堂々とお散歩番組と言えるのは、地井武男の「ちい散歩」からだろう。
ほどほどに町衆の暮らしに興味をもち、愛情にあふれた会話が番組を盛り立てた。散歩しただけで、故郷に地井武男記念館まで出来てしまったのは地井さんを置いて他に例をみない。
二番手の加山雄三はひどかった。人々の暮らしている町だという想像力に欠け、自分が歩けば番組が成立するかの錯覚に捕らわれた古いスターの褒めようのない散歩だった。オールドファンのまぁ加山さんよ、といううぬぼれが鼻についた。かっての映画スターはテレビでは通用しません、という証明番組だった。
三番手の高田純次には違った面白さがある。自分自身をカリカチュアして道化の散歩になっている。町の表情を捉える能力はきちんと持っているので、興味は充分に持続できる。
石原良純の散歩は軽さが目立って大人の観賞にたえない。視聴者としてはマツコ・デラックスの散歩のほうがはるかに面白い。教養ある異形のオカマとして、得難いキャラクターなのだ。
コスパに優れたお散歩番組
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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