第一生命サラリーマン川柳コンクール第30回ベストテンが発表された。
全国から55.067句寄せられ、ファン約11万4000人の投票によって決められたものだそうだ。ファン投票というのは一見よさそうにみえるが、実際にはよくない場合が多い。広く一般の人の趣向で選ぶと、概ね毒のあるユニークな作品は消えてしまう。つまらない平凡な作品に落ち着くことが多い。川柳というアイテムに一般投票はなじむかと問われれば、否と答えるしかない。
川柳そのものの表現からいっても、時代を風刺したり、人間関係をパロディするのだから、鋭い眼をもっていてこその審査なのだ。
上位10位に選ばれた作品はあまり刺さらなかった、というのが正直なところだ。
一席の「ゆとりでしょ? そう言うあなたはバブルでしょ?」世代間の意識ギャップは散々にいわれてきているので、あまり刺さらない。類型的にすぎる作品なのだ。
二席「久しぶり! 聞くに聞けない 君の名は」、四席「同窓会 みんなニコニコ 名前出ず」いずれも高齢化社会の入り口の作品で、突っ込みが足りない。
三席「ありのまま スッピンみせたら 君の名は?」この句も新鮮味はない。アメソンのさわりと映画の題名をもってきただけの昔からあるパターンだ。
六席の「君の名は ゆとり世代の 名が読めず」キラキラネーム以後、「たまひよ 赤ちゃんのしあわせ名前辞典」の影響がすさまじい。名前は文字よりも響きを大切にし、従来の日本語ではないイメージ中心の名前をつける。女の赤ちゃんでは、美しくしなやかに、大地にしっかり根を張るように生きて欲しい、ということで…。
華・はな 陽葵・ひまり 結衣・ゆい 心春・こはる 芽依・めい 澪・みお 莉央・りお 陽菜・ひな 穂花・ほのか 結愛・ゆあ 美結・みゆ 一花・いちか 結月・ゆずき 沙菜・さな 咲希・さき 詩織・しおり … 等々 しあわせ名前辞典では、あなただけのWeb鑑定サービスもついている。
古い世代から見るとキャバレーの源氏名にしかみえないが、母親たちは読めなくとも一向にかまわない。一生自分の名前の読み方を、説明し続けるわが子の不幸は想像外なのだろう。
九席に至ってようやくスタッフに受けた。 「オレのボス ヤフーでググれと 無理をいう」 なるほどというテクニックがある。
ヤフーとグーグルの違いがわからない老人には、若い世代からの痛烈な一矢である。
サラリーマン川柳の堕落
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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