妊娠菌を撒き散らせ

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妊娠菌を撒き散らせ
 東尾理子、小倉優子、松嶋尚美、大島美幸、辺見えみり、矢沢心、熊田曜子、SHIHO、藤本美貴、等々……
この人々は陣痛が来たときに、赤い富士山とおテントウさまを書いていた。妊娠・出産の喜びをみんなに分かつためだ。赤富士と太陽が妊娠に効くとは知らなかったが、ものの本によれば、この都市伝説は竹取物語にあるそうだ。かぐや姫がお爺さんとお婆さんに渡した不死の薬を、二人は山の上で燃やしてしまう。それが不死の山、富士山の起源になったという説だが、古くから富士山と子宝を結び付ける俗信はあったといわれる。
 これがネットの今になって、芸能人の妊活から猛烈に広がったと言われる。
 陣痛時の「子宝赤富士」を飾っておくと、「妊娠菌」が移るというのが、コンニチタダイマの都市伝説なのだ。職場で妊娠が発覚し、いよいよ産休に入る女性社員は、「妊娠菌を置いとくね!」それが日常挨拶だというからますますショックだ。
 昔から「あやかる」という俗信があり、子供に恵まれない嫁は、子沢山の母親から水天宮さんで拝んでもらった腹帯を譲り受けたり、多産の女性にあやかって、その女性が身につけていた腰巻をいただいたりしたといわれる。
 女性芸能人が結婚すると、おめでとうオメデトウと祝福されながら少しずつ仕事が減っていく。それを打開するのが子持ちの親になった女性タレント、そのためにも妊活にいそしむのだそうだ。子持ちになれば、午後のワイドショウに空席が待っている。
 ネット上では「妊娠菌」関連グツズがとぶように売れているそうだ。懐妊前につかっていた基礎体温計、男女産み分け用のローション、その他使用済みのマタニティマークなど、値打ちものは有名タレントが陣痛時に描いた赤富士、なんでもかんでも妊娠菌を振りまくために商品化されている。
 孤独と不安に苛まれている妊婦が、タレント直筆の赤富士を奪い合うという風景は、常人の理解に苦しむところだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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