「こんにちわ」「こんにちわ」細いあぜ道で行き交った小学生が声を掛けてくれる。あわてて返事を返す「こんにちは」。お祭りの撮影であちこちに飛びまわっていたころ、信州のチベットなどと呼ばれている過疎の村にいくほど、子供達は、無邪気な笑顔を投げかけてくれた。醸し出す温かさに癒され、さあいい写真をとるぞ、と励まされた。子供たちの何気ない挨拶の言葉は、形式的な村長の挨拶よりずつと嬉しかった。
神戸に「挨拶禁止マンション」があると報じられた。
身元不明の他人にあいさつの言葉をかけるなんて、危険きわまりない。子供達を危険にさらすようなものだ。
だからマンション構内はもとより近所でも知らない人に挨拶してはいけない、というお触れなのだ。
この報道に接し、世も末と思った。そんなに人を疑って生きて、面白いのか。挨拶禁止を主張したママたちには血が通っていないのではないか。世間には貴女たちより素晴らしい人々がいっぱいいる、そうした人々を否定するほど貴女は偉いのか。人は人に支えられて生きてゐる、という社会そのものの否定につながる愚行以外のなにものでない。
不衛生だから餅つき大会は止めろ、とか、除夜の鐘はうるさいから止めろ、花火大会ほど危険なものはない、火事になったらだれが責任をとる、人間にゆとりが無くなったのか、それともオバカになったのか、アメリカ型の訴訟社会に毒されてなんでもかんでも訴える、とてもいやな国になってしまった。
ふと見渡せばクレーマーだらけの荒地が広がっている。くたばれ人権、感謝再武装を進めよ、なのだ。
挨拶禁止マンションの大愚行
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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