大晦日の楽しみ

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大晦日の楽しみ
 とうとう大晦日が来てしまった。
 大晦日は世間では紅白歌合戦の大晦日のようだが、わが家では、間に合わなかった大掃除の大晦日である。
判り切ったことなのだから、早くから手をつけ、少しずつやっておけばいいものを、結局手が届かずに大晦日は
腰が痛いとか、腕も痛いとか言いながら、あちこちにたまつた雑誌やら埃をかぶった郵便物などの整理に追われる。
 一夜飾りはいけないというので、昨日は玄関の牛蒡巻きやら、来年の干支には輪飾りと何とか間にあわせたが、事務所の飾りものには行けずじまいとなってしまった。齢とともにこうした動作が鈍くなる。
 世界のベストセラーになった「断捨離」をちゃんと学ばねばと思うが、この歳まできてしまったので今更という気分がなくもない。 祇園の家で断捨離などと言おうものなら、家庭内イスラム戦争が勃発する。なにしろ整理するという観念がないし、先祖代々の「お荷物原理主義」で棄てるという発想がない。つまり不要になった
雑誌やキモノや資料、到来ものとともに暮らしているのだ。祇園町の家をそっくり断捨離したらトラックの何十台分のオタカラがでてくるだろう。
 大晦日の煙は朝からおせちを炊く煙だったが、いまでは宅急便と共に祇園川上さんのおせちがやってくる。
川上さんは直木賞作家松井今朝子さんの実家だが、いまではご両親は引退されお弟子さんが跡を継いでいられる。壱の重31品、弐の重17品 京の名包丁人が腕をふるったおせちとあれば、こんなに有難いことはない。
 昔は主婦の楽しみだったおせち作りが、デパートに奪われ、名料亭の重積と変わって女性達は本当にシアワセなのだろうか。
 元旦には親戚の娘と自称するアラホォーの某女を交えお屠蘇を交わし、〽正月さん、正月さん、正月さんがござった、正月さんはうれしいな、といきたいところだが、もはや末期高齢者としては目出度さもドン底である。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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