町の支配者はコンビニになっていた

by

in

町の支配者はコンビニになっていた
 気がついたら、町の支配者はコンビニになつていた。
 長い間あってもなくてもいい、そんな感じのお店だつたのが、少子高齢者時代を迎えてコンビニはかなり本気のビジネス形態になってきた。
 思い起こせば、コンビニのおにぎりが話題に上り、町のおにぎりやさんが歯がぬけるようになくなっていった時代があった。 薄いセロファンを縦にさき、開いた両側から乾いた海苔を取りだして巻いて食べる。パリッとした乾いた海苔を今ここで食べられるというのは、おにぎりにとっては歴史的大革命だった。
 そもそもアメリカから来たこの業態におにぎりがあることが不思議なのだが、日本の経営者はコンビニの弁当におにぎりを取り上げ、サンドウィッチを凌駕して有力なレパートリーに仕立て上げた。内容も梅、海苔、シャケの並みから大幅に広げ、マヨラーから魚族、肉族にまで対応して百花繚乱、飯も魚沼産こしひかりからアキタコマチ、さらに北海道ユメピリカを投入してのお米競争、あの手この手でユーザーの食欲をくすぐった 。
 町の本屋が次々と潰れていくのを横目に週刊誌、月刊誌、女性誌、ピンク誌まで窓側に並べてしっかりと利益確保し、ポストも宅急便もすへてコンビニ任せ、役場の税金までコンビニに拂えばいいし、手元不如意の折にはATMまで用意されている。
 最近のコンビニの話題といえば、街角カフェでコーヒーが美味しい、そのうえ突き出しのドーナツがなかなかいけると、ドーナッツ専門店をかるく抜きさって評判が高い。パリの短期講習から帰って来たパテシィエまがいの菓子より、コンビニのオールド・ファッション・チョコドーナッツのほうがはるかに美味しいのだ。
 文具類にしても10年一日のごとくに同じ鉛筆、ノートではない努力の品揃いがみてとれる。
 零細小売業と舐めていたのが、気がついたらコンビニ無しでは、夜の明けぬ国になっているのではなかろうか。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


カテゴリー


月別アーカイブ