音楽とポェジーは出逢ったか

by

in

 とても珍しいコンサートを聞いた。田舎ではほとんど触れることのない現代音楽と詩、俳句をテーマにした音楽会だ。パリでお世話になったピアニスト、ノゾミ・フロリオさんと蔵野蘭子さんの演奏だ。
 「音楽とポェジーが出会う時」というテーマだったが、取り立てて作曲家ルノー・ガニュー氏の来日もあって一茶、マブソン、虚子、芭蕉、啄木の日本勢に対し、ヴェルレーヌ、ルイアラゴン、ジャン・コクトーといった作品が取り上げられていた。
 ノゾミ・フロリオの演奏はダイナミツクな表現とアバンな感覚で現代楽曲の楽しさを充分に伝えてくれた。
長いパリ生活と、ムジカテンポラリアのメンバーとしての活動が生きていたように感じた。
 ベルカウントの発声が、俳句の様式にあうか、その点については大いに疑問が残った。俳句や詩歌のようなより深く単純化された言葉、思想とオペラティックな唱法は、まるで断面が違う。言葉の奥行きが全然異なる。歌い手が一生懸命にやればやるほど空回りする。なによりも最後にカルメンの写実的な芝居をドヤ顔でやられたのには反応に戸惑った。とくにこの日の会場はサロンなのだということがいまひとつ判っていなかったのではないか。
 朗読を担当した小山菜穂子は音色も良く、すぐれて俳句の世界を表現していた。
 フランスのように小学校から詩の授業があり、街中でも詩のイベントが日常的に開かれている国ならばと、改めてこの国の貧しさを感じたコンサートだった。


コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です


プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


カテゴリー


月別アーカイブ