鮎解禁の便りが行き交っている。
鳥居本の平野屋さんからは、鮎風船が送られてきた。
梅雨の中休み、あまりに空が抜けているので、千曲川添いのヤナ場目指して車を走らせた。
目印の鯉のぼりはだいぶ色あせていたが、ヤナ場ははためく幟に守られて、千曲川の味を守っていた。
食卓から季節が少しずつ失われ、近頃はローソンのカツ・サンドがとても美味くなったなどと、食味に対する貞操が失われつつあるので、せめて近くにある自然の味は大切にしたいと思っている。
岩魚、はや、鮎は一通り塩焼きでいただいた。同じ川魚でも生存域の違いで微妙に味が異なる。最上流の清流にすむ岩魚は透明感のある味に脱帽する。腹を赤くした産卵期のはやには、いかにも命の力が漲っている。鮎は川苔のかすかな香りをためて、香魚の名に相応しい。
田楽をいただき、天ぷらをいただき、甘露煮をいただいて、川魚の総てを食して千曲川の恵めを隅から隅まで味わった。
優しく吹いてくる川風に体をゆだねながら、秋には松茸だなと、千曲川の向こうの山並みを望んで幸せな土曜日だった。 よしず張りのヤナ場には食の故郷がある。
千曲川のぜいたく
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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