風鈴が連れてくる夏

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風鈴.jpg 両国花火.jpg おおはしあたけの夕立.jpg
 本郷西片町のこども時代、夏が近ずくと楽しみは「風鈴やさん」だった。
 赤門前のダルマに「氷」の旗がたつと、風を受けた氷旗のひらめきの向こうに、風鈴の音がきこえた。
 梅雨のあけるのと一緒に路地の向こうから風鈴やさんが現われる。  …今年はどれにしようかな、……
 安っぽいガラスのマルに金魚や水草の描かれた素朴な風鈴だったが、夏は風鈴とともにやって来ると、こども心に思い込んでいた。
 風鈴を釣るのは、縁側のかどの軒下と決まっていたが、近所の棟梁がきて釣ってくれるのが待ちどおしかった。
 選んだ風鈴がはじめてチン、チンと鳴ると、嬉しくて30分も一時間も風鈴を見続けていた。
 ひと夏の最大のイベントは、大川の花火、おせいさんに手をひかれ両国の大川端までいった。
 夏の景色といえば、隅田川を埋め尽くした花火見物のチョキ舟と、シュルシュルと音をたてて打ち上げられる花火、訳も判らずに
「玉や!」「鍵や!」と声を上げるのが、訳もなく嬉しい夏の夜だった。  


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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