顔認証のげんじつ

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 南紀白浜がいま注目されている。
 顔認証の実験地域としてNECが展開している「IOTおもてなしサービス実証」である。
 空港をおりたらモニターの前にたつ。カメラが認識すると「ようこそタカハシさま、白浜にお出掛けいただきありがとうございます。どうぞご自由に白浜をお楽しみください。」
 無論カードデータなどの登録もするのだが、以後の滞在、観光にはいっさい金銭はいらない。
 旅館についても「いらっしゃいませ、タカハシ様、お部屋は離れの弁天島をご用意させていただきました」荷物は先にお部屋に届けられているし、バーもお土産物も顔パスである。
 部屋を出る時も自動的にロックしてくれるから鍵は不要。ビーチのレストランでも手ぶらで顔パス、現金やスマホを持ち歩く必要もないので、紛失・盗難の心配もなく、岩陰の浜辺で時を忘れて愛に浸るのも可能だ。顔パスの有難さがしみじみとわかる。
 お化粧はどうなるの、と心配するデスクだが、スッピンで拒否されるほど現在の顔認証はおくれていない。…でもお化粧落としたら別人だよ、どこまでも心配するのは女性である。
 白浜で可能なら、軽井沢でもやったらいいのに、うっかり口を滑らしたら、「ダメでしょう。軽井沢の観光逗留客の3分の一は不倫です」と痛い発言がとびだした。顔認証と不倫は相性が悪いようだ。
 この国のあらかたの観光地に顔認証が導入されて最後の町が軽井沢という結果が待っている。G20には真先に手を挙げる町長も個人情報保護のたてまえで反対するかもしれないし、近頃ご当地で結婚式を挙げた大臣だって賛成しかねるだろう。
 かくて人に優しい不自由な高原のリゾートが、つづいていくのだ。


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プロフィール

星野 和彦

Kazuhiko Hoshino

1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表

作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞


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