軒先からツララがすだれの如くにさがっている。5.60センチほどもあろうか。
真冬日が続く軽井沢ではさほど珍しいことではない。つららをとおして見る白樺の林は実に美しく、雪国ならではの至福の情景である。
家の南側では、凄まじい音を立てて屋根の雪が落ちている。寒さが少しゆるみ、陽の光が温かさを運んでくると、すかさず反応するのが屋根の斜面にたまった雪だ。北アルプスの雪崩れに直面したことはないが、一瞬の陽の光に滑り落ちる屋根の雪を見ただけでも、雪崩れのすごさは想像できる。
足元の雪は見ているだけなら白く美しいが、町へ使いにでるとなるとなかなかの難題となる。四駆スノータイアの愛車は工場に入っていて、代車できた赤いアウディはFFなので、雪道は走れない。駐車場の雪下ろしをしながら乗れないクルマを横目にタクシーのお世話になる。
日頃お世話になっているタクシーは、チェーンを巻いて森の我が家まできてくれる。家のまえの路地は狭く、車の一台がようやく通れる幅しかないので、お尻を振りながら迎えに来るのも難儀なことだ。。
管理事務所の除雪車が早く来てくれないと、新聞配達やら、宅急便やら、タクシーのわだちが凍りついてどうにもならなくなる。一日の最高気温が零下では、想像を超えたトラブルが発生する。
あれもこれも春の若葉、夏の涼風、秋の紅葉と豊かな自然の贅沢への見返り税とあきらめている。
そうこうするうちに冬木立のなかを除雪車が、音もなく通り過ぎていった。
しばらくは平穏な雪景色が続くことだろう。
零下5度の杜の下で
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プロフィール
星野 和彦
Kazuhiko Hoshino
1931年 9月17日 東京に生れる。
1954年 成蹊大学政治経済学部・芸術社会学コース 卒業。
1955年 旧帝国劇場文芸部 所属。
1958年 テレビ朝日(旧NETテレビ)制作局演出部 入社。
1960年 フランス・パリ・ムーランルージュより演出として招聘される。1年間滞仏。
1961年 テレビ朝日復職。
1968年 テレビ朝日制作局チーフ・ディレクター、企画室ブロデューサー を最後に退社。
星野演出事務所 設立。代表取締役 就任。
1973年 クリスチャン・ディオール取締役 就任。
1975年 SKD松竹歌劇団 演出就任。
1977年 東京フィルム・コーポレーション 取締役。
1980年 リード・ファッション・ハウス 代表取締役 就任。
1990年 軽井沢に居を移し現在までフリーの 演出家、プロデューサーとして、また執筆活動に従事する。
現在
日本映像学会 民族芸術学会 所属
テレビ朝日 社友
星野演出事務所代表
作品受賞歴
1953年 芥川竜之介作「仙人」第二回世界国際演劇月 文部大臣賞
1967年 連作みちのくがたり「津軽山唄やまがなし」芸術祭奨励賞
1970年 連作みちのくがたり「鹿吠えは谷にこだまする」芸術祭優秀賞
1971年 ミュージカル「白い川」芸術祭文部大臣賞
1992年 NDK日本ファッション文化賞
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